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肝臓がん


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肝臓がんははじめから肝臓にできる原発性肝臓がんと他の臓器から転移した転移性肝臓がんに分けられます。
 原発性肝臓がんはその約90%が肝細胞がんとよばれるもので,その他には胆管細胞がんや小児に発生する肝芽腫などがあります。
肝臓がんの原因
 肝臓がんは他の臓器のがんとは異なり,他の場所からの転移が多いということが言えます。それは血流に乗ったがん細胞が肝臓の中にある小葉にとらえられ,そこで増殖するためです。
 日本人の肝細胞がんは,その多くが慢性肝炎や,肝硬変から発症します。特にB型肝炎やC型肝炎は感染したウィルスにより,肝細胞の遺伝子に突然変異がおこり,がん化すると考えれています。
 アルコールの多飲は肝硬変につながり,それがやがて肝細胞がんの発生につながることはよく知られています。またナッツ類に含まれる植物毒(アフラトキシン)を吸収することで肝臓がんが発生することもあります。
 2002年には肝臓の細胞をがん化させるがん遺伝子(ZNFN3A1)が発見され,この遺伝子のはたらきにより,細胞の異常増殖が起こると考えられています。
肝臓がんの症状
 肝臓は沈黙の臓器と呼ばれるように,症状が出にくく,症状が現れるようになってからは,もう手術もできないほど進行していたということが多いがんです。
 肝臓がんも末期になり,がんがかなり大きくなると,外からさわるとしこりを感じたり,上腹部の右側に圧迫感を感じるようになります。
 そしてがんの進行とともに,肝臓の機能が低下すると,黄疸や腹水がみられ,発熱,意識障害などが起こることがあります。
 この肝臓がんは直径3cm程度になると急速に成長が早くなるという特徴があり,2~3ヶ月で2倍になることもあります。そのため,症状が出はじめるころはがんはかなり進行しており,治療が困難なケースが多いと言えます。
 肝臓がんは肝硬変をともなっている場合が多く,この場合胸にクモ状血管腫が見られたり,手のひらが紅色になるという症状がみられることがあります。
肝臓がんの治療
外科療法
 腫瘍を切除する手術療法が,確実な治療法です。肝臓は再生能力が高いため,肝臓全体の4分の3まで切除が可能です。ただし,ステージ2までが手術の対象であり,それより進行した場合は対象外となります。また肝硬変の病変が進んでいる場合は切除する肝臓の量は少なくせざるを得ません。
 肝臓がんは再発の多いがんであり,肝切除術により完全にがん細胞を切除したとしても3年~5年後までに再発する確立は70%にも達します。しかし再発した場合でも条件によっては再手術も可能であり, 近年の研究により,術後再発の予防として,レチノイド,インターフェロン,ビタミンKなどに効果がみられることが報告されています。また免疫療法で免疫力を高めておくという方法も効果があります。
経カテーテル動脈塞栓法(TAE)
 肝動脈にカテーテルを入れ,そこから血管に塞栓物質をつめ,血流を絶ち,がん細胞を殺す方法です。肝細胞がんは肝動脈からのみ血流を受けているため死滅しますが, 正常細胞は門脈からの血流もあるので死滅しません。塞栓物質として抗がん剤をいれることもあります。
動注療法
 塞栓物質を使わずに,抗がん剤だけを,肝動脈に注入する方法で,静脈からの投与に比較して患部に高濃度の成分が集中するため,効果も高く副作用も少ない新しい治療方法です。  近年,動注療法にインターフェロンの皮下注射を併用することで,従来は治療できなかった門脈付近の腫瘍栓 (血管を塞いだ腫瘍)を持つ肝細胞がんに対して50パーセントの奏効率をあげているとのことです。
エタノール注入療法(PEIT)
 腹部または胸部から針を刺して,患部にエタノール(純粋アルコール)を注入し,がんを凝固させ死滅させる方法です。
 この治療法が有効となるのは,がんの直径が2から3cm以下までと言われています。この治療方法は患者の体に与える副作用が少なく,短期間で退院できるという長所があります。
マイクロ波焼灼(しょうしゃく)療法(MCT)
 電極を腫瘍に差し込み,電子レンジと同じマイクロ波により高熱を発生させ,がん細胞を凝固させて死滅させる方法です。マイクロ波では直径1cm程度の範囲の組織を凝固させることができ,開腹することもありますが,開腹せず,腹腔鏡や胸腔鏡を用いる方法もあります。
ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法(RFA)
 マイクロ波焼灼療法と同様に腫瘍に電極を差し込んで治療しますが,マイクロ波より温度が低く,そのため広い面積の治療が可能であり,3cmの腫瘍が3個以内,5cm以下の腫瘍が1個の場合対象とされ,マイクロ波よりも広く行われています。
肝臓がんの最新治療
抗がん剤5-FUの動注化学療法とインターフェロン併用治療
 動注化学療法とは,そけい部からカテーテルを入れ,肝動脈から腫瘍部に抗がん剤を集中して直接投与することにより,薬剤を腫瘍に集中させるがん治療法です。
 大阪大学の報告では抗がん剤5-FUを肝臓に動注療法で少量ずつ24時間投与すると同時に週3回インターフェロンの筋肉注射をすることで,手術できない進行がん患者でも48%の人にがんが消失したり(CR),大幅に縮小したり(PR)する成果があったということです。
 この治療法では局所に抗がん剤を投与するため,副作用も少なく,また治療を開始してから効果が現れるまでの期間が短いというメリットがあります。
 この治療法が開発されたため,この治療法で腫瘍を縮小させた後,手術やラジオ波焼灼法などでの治療も可能となりました
。  ただし,これまでのデータによると約半数の肝臓がん患者には効果があるものの,残りの半数の患者には効果が見られないということです。
 現在,肝臓がんにインターフェロンは保険が適用されず,自費治療となりますが,がん治療効果が大きいことからこの治療法を採用している病院も増えています。 
経皮的肝灌流化学療法(PIHP)
 この経皮的肝灌流化学療法(PIHP)は肝臓だけに抗がん剤を集中投与するため,効率よくがん細胞を死滅させることができ,かつ他の臓器など正常細胞には抗がん剤の影響が少ないという画期的な方法であり,神戸大学の肝臓外科チームが新たに開発したものです。
 この治療法は,肝臓をはさんで下大静脈の上下をバルーンでふさぎます。そして,肝動脈から通常の10倍の高濃度抗がん剤を投与します。その抗がん剤は血流とともに肝臓の腫瘍を経て,肝静脈から下大静脈に入りますが,その上下をバルーンでふさがれているため,血流はバルーンについたカテーテルの穴に入り,そこから体外へと送られ,抗がん剤が濾過された後に,体内に戻されるという方法です。
 つまり,この方法ですと,高濃度の抗がん剤を肝臓のみに集中できる上に,抗がん剤が体外で濾過されるため,他の部分には送られず,副作用も大幅に軽減できるというメリットがあります。
 神戸大学はこの方法ですでに臨床試験を行っており,臨床第1,2相試験では肝臓がんの遠隔転移を伴わない,ステージⅣの患者に対する奏功率では64%,5年生存率では20%と1年前後しか生存が期待できなかった進行肝がん治療成績が著明に向上しています。
 このがん治療法はまだ新しく,実施されている施設も少ないようですが,治療効果も大きく,今後も臨床試験で効果が確認されれば普及される治療法であると考えられます。
肝臓移植
 肝臓がそれほど進行していないにもかかわらず,肝切除ができない場合や,肝切除後に再発した場合考えられるケースです。
   遠隔転移や血管侵襲がなく,肝臓がんの個数が1個以下なら5cm以下,3個までなら腫瘍の大きさが3cm以下のがんなら効果が期待されるため,対象とされます。
   しかし,他人の臓器に対する拒絶反応を抑制するため,免疫抑制剤を生涯飲み続けなければなりません。そのため,病原体に感染しやすく,臓器移植後の死亡は多くが感染症によるものです。
   肝移植には脳死者から行う場合と生体肝移植として生きている人間から一部移植する場合がありますが,血液型だけでなく,免疫反応を抑えるため,HLAの分子の形が似ていることが必要で,ドナーを見つけることが難しい状況にあります。

    2007-12-31

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