◇今年最高の1点
「肝臓に空気がたまっています。精密検査を受けてください」。初めて受けた人間ドックでこんな結果が出た。「きっと悪い病気に違いない」と思い込み、検査前に今見たいものはすべて見ておこうと決めた。
というわけで、今回はほとんど会期が終了している展覧会ばかりの紹介になってしまった。
まずは何が何でも「フェルメール」。オランダが世界に誇るフェルメールは、世界に30点ほどしか作品がなく、1点だけでも見られたら幸運である。今回は「牛乳を注ぐ女」が六本木・国立新美術館で公開された。美術館では日展も開催され、平日でもツアー客やら修学旅行生やらでごった返していた。
絵の前は、二つの行列があり、前列は「立ち止まってはいけない列」、後列は「立ち止まってゆっくり見てもいい列」。うまく考えてある。私はもちろん前列に並び、間近で見ることが出来た。「牛乳……」は思ったより本当に小さいが、薄暗い照明の中でも、ひときわ光り輝いている。解説によると絵の具の研究にとても熱心だったらしい。立ち止まってはいけない列なのでほんの数秒だったが、とても幸せな瞬間だった。1点だけでも入館料1500円の価値は十分あった。グッズも充実。間違いなく今年最高の1点だった。ほかは全く見ないで、次の「世界を魅了したティファニー」展へ。
170年のティファニーの歴史を、約200点もの超高級ジュエリーで紹介するという目もくらむような内容。横のおばさんたちは「これ、いくらぐらいかしらね~」としつこいぐらい繰り返していた。
旧朝香宮邸の建物をそのまま利用した東京都庭園美術館は、このゴージャスな展覧会にぴったり! と興奮したが大ハプニングが発生。一つの展示ケースの中になんと、1匹のゴキブリがゴソゴソ。監視員によると公開中はケースを開けてはいけない決まりらしく「お見苦しい点があり申し訳ありません」という看板があった。せっかくのティファニーなのに……。
気を取り直して向かったのは上野・東京国立博物館の「大徳川展」。将軍家、尾張・紀伊・水戸の徳川御三家などに伝承されてきた門外不出の宝物がズラリ。展示は大きく二つに分かれ、一つ目は刀やよろいかぶとなどの「お殿様」系。二つめは着物やお道具など「お姫様」系。お殿様系で面白かったのはお殿様の書。昔の殿はみんな達筆かと思いきや“あれっ?”という書もあった。この殿も後世の庶民に失笑されようとは思ってもみないことだったろう。ちなみに日本で一番最初に鉛筆を使ったのは超達筆の徳川家康だったという。
お姫様コーナーはさすがに素晴らしい。「たらい」にまで豪華な蒔絵(まきえ)が施してある。特に源氏物語や古筆類が圧巻であった。文句なく第1級の内容で、星三つ。
帰りに近くの国立西洋美術館で「ムンク展」を見たが、肝心の「叫び」がなくがっかり。「叫び」のないムンクは、ハンバーグのないハンバーガーのようだった。ちなみにムンク展のみ来年1月6日まで開催中。
これで思い残すことはない、と臨んだ精密検査の結果は「まったく異常なし」。おまけに「肝臓はいいけどヤセなさい」とくぎを刺されるおまけ付き。という結末で来年もこのコーナーは続く予定です。どうぞお楽しみに。
2007-12-22