◇名張在住の女性訴え「国はこの思い受け止めて」
原告団が国に対して被害者の一律救済を求めている薬害C型肝炎訴訟。名張市在住の女性(71)は、輸血が原因でC型肝炎に感染した。病気への恐怖とともに、感染に対する「誤解」などで約40年間も苦しんできた。女性は「患者を代表して頑張る原告の方々にありがとうと言いたい。国は原告の思いを受け止めてほしい」と訴えた。【金森崇之】
女性がC型肝炎に感染したのは67年、長男の出産時に800CCの輸血を受けたとき。当時、女性は大阪市内の病院で看護師をしていたが、「痛みに耐えるのに必死で、血液製剤を投与されたかどうか分からない」と言う。だが「薬害ではなくても、自分も経験を話すことは出来る」。実名を公表し訴える原告らの姿を見て、そう決意した。
感染当時、女性は恥ずかしいことだと思い、周囲にも約10年間隠し続けた。長男に母乳を与えることも出来ず、出産後に約5カ月間入院した時には、夫に毎日手紙を書き、「離婚してほしい」と伝えたこともあった。
当時、C型肝炎はエイズウイルス(HIV)と同様に感染ルートに対する誤解があった、という。看護師であるこの女性でさえ「誤解」に悩み、自分の食器を家族とは別に洗い、風呂も自分の後には誰も入らせなかった。夫婦生活のことも医師に相談した。「誰かに感染させたら申し訳ない」。常に不安を抱えながら生きてきた。
看護師をしていた時、C型肝炎から肝硬変などに進行し、亡くなる患者を何人も見てきた。そのたびに、「私も死ぬかも知れない」という恐怖が襲ってきた。だが、「夫や周囲の人が支えてくれて精神的に立ち直れた」と女性は振り返る。年に3回の検査を欠かさず、肝硬変や肝臓ガンは発症していない。
今年6月、常に支えてくれた夫をガンで亡くした。それ以来、女性は毎日日記を書き続けている。「お父さんと会話しているような気持ちで書いているんです」。涙を浮かべながらページをめくる日記には、日々の出来事や薬害訴訟の原告団に対する思いがつづられていた。
女性はテレビに映る原告団の暗い表情が悲しいという。
「元気を出してほしい。肝炎でもすぐに死ぬわけじゃない。私は90歳まで生きると医者に言われてますよ」
話す表情は笑顔だった。
2007-12-20