C型肝炎は「ウイルス性肝炎」です。ウイルス性肝炎はだんだん
肝硬変や肝臓がんに進展する可能性がある。
ウイルス性肝炎にはA型、B型、C型、D型、E型がありますが、D型肝炎はアマゾン川地区、E型は東南アジアなどに限られており、日本ではほとんど見られません。日本で多いのはA型、B型、C型です。この中で特に重要なのが
「C型肝炎」です。
「肝硬変」や
「肝臓がん」という病気の名前はみなさんも聞いたことがあるでしょう。やっかいな病気です。しかし、これらの病気はカゼのようにいきなりかかるのではなく下記のような経過をたどるのがほとんどです。
肝炎ウイルスに感染 → 急性肝炎 →
慢性肝炎→ 肝硬変 → 肝臓がん
このように肝臓がんの原因となる各肝炎ウイルスですが、その内訳は約8割が
C型肝炎で、約1~2割がB型肝炎と言われています。A型肝炎で肝硬変や肝臓がんになることはありません。それぞれのウイルス性肝炎の経過は次の通りです。
| A型肝炎 |
B型肝炎 |
B型肝炎 |
C型肝炎 |
A型肝炎ウイルスに経口的に感染
↓
急性肝炎まで
(慢性化はしない) |
成人がB型肝炎ウイルスに血液より感染
↓
急性肝炎
(一部を除き慢性化はない) |
子供が母親から出産時にB型肝炎ウイルスに感染
(母子感染)
↓
慢性肝炎
↓
肝硬変
↓
肝臓がん |
成人がC型肝炎ウイルスに血液より感染
↓
急性肝炎
↓
慢性肝炎
↓
肝硬変
↓
肝臓がん |
現在、日本全国に200万以上の
C型肝炎ウイルス感染者がいると言われ、
C型肝炎はまさに「国民病」とも言える深刻な状況です。
C型肝炎ウイルスの感染経路は従来、輸血(30~40%)、入れ墨・覚醒剤の注射(10%)、そして原因不明(50%)と言われてきました。(母子感染はほとんどなく、性行為による感染もごくわずかです。通常の生活で感染することはありません。)
しかし近年、C型肝炎ウイルスの有力な感染原一つとして、昔行われていた予防接種等の医療行為の際の注射針や注射筒の連続使用による医原性の感染の可能性が強く指摘されるようになりました。(現在の医療施設では一人一人注射針と注射筒を変えて使用されています。)
更に、最近になって非加熱血液凝固因子製剤の投与を受けた患者が、B型、C型肝炎ウイルスに感染している可能性が高いことが判明し、医原病の性格がますます強くなるとともに、厚生行政の対応の遅れが問題となって来ました。
平成13年3月29日、 厚生労働省は、血友病以外の病気で非加熱血液凝固因子製剤の投与を受けた患者が、B型、C型肝炎ウイルスに感染している可能性が高いとして製剤を投与した803の医療機関名を公表し、投与を受けた心当たりのある人たちに肝炎ウイルスの検査を受けるよう呼び掛けています。検査は公表した医療機関で7月31日まで受け付け、費用は無料となります。
しかし、該当する人はC型肝炎感染者の中ではごく一部であり、まだ日本には自分がC型肝炎に感染していることさえ気づいていない方もたくさんおられます。C型肝炎ウイルスの感染源の大きな原因の一つが医療行為であるという重大性と、診断及び治療が早期であるほど治療効果が高いということを考えれば、対象を限定するのではなく、健康診断レベルで国民に広くC型肝炎の検査を受けていただくべきと思いますし、国も積極的に支援すべきと考えます。
C型肝炎ウイルスは1989年にウイルス遺伝子の断片が発見され(それ以前は「非A非B型肝炎」とよばれていた)、日本では1989年11月より輸血用の血液はC型肝炎ウイルスの感染の有無(第一世代HCV抗体)をチェックしており、更に1992年2月からより制度の高い第二世代
HCV抗体が導入され輸血後の肝炎発生はほとんどなくなりました。献血で抗体陽性の方には1992年頃から通知を行っています。なお、
HCV抗体が陽性でも、抗体価が低い場合、一過性の感染だけで既にウイルスが存在しない方もおられますから、必ず専門の病院でウイルスの存在を確認しておくことが大切です。
HCVの初感染後、C型急性肝炎として発症します。発症後、一過性感染として治癒することは少なく、約60~80%は慢性肝炎に移行します。散発性や薬物乱用によるものよりも、輸血後のほうが慢性化率は高いとされており、
HCVを含有する大量の血液が体内に入ることや複数のウイルスが入るためと考えられています。C型慢性肝炎に移行後の自然治癒率は5%未満とまれであり、肝病変はゆっくりと進行し、やがて肝硬変に至り、さらには肝細胞癌に進展します。2005年における、C型肝炎による死亡数は、男性2,350人、女性2,505人です。
慢性肝炎の時には無症状のことが多いですが、倦怠感や食欲不振を訴える患者さんもおられます。C型肝炎の自覚症状は他の急性肝炎と同様、黄疸、食欲不振、全身倦怠感、嘔気、頭痛、発熱などがみられますが、全般的にA型、B型急性肝炎に比べて、自覚症状が軽微です。まったく自覚症状がなく、不顕性感染のまま慢性肝炎として診断されるケースも約30%程度あります。
C型慢性肝炎は、自覚症状を認めないことも多く、患者の約半数は健診や人間ドック、献血時、あるいは他の病気で診察中に偶然発見され、診断されることがあります。
病状が進んでいくと(肝硬変)、本格的に症状を感じるようになります(無症状の人もいます)。倦怠感・上腹部の鈍痛、膨満感、食欲不振、吐き気、発熱、筋肉痛・関節痛などを自覚するようになり、クモ状血管腫(胸などに小さな血管が浮き出てくる)、女性化乳房(男性の乳房がはってくる)、黄疸(目が黄染されてくる)、手掌紅斑(手のひらが赤くなってくる)、腹水(お腹に水がたまってカエルのように腹が出てくる)、浮腫(足が腫れてきて指で皮膚を押すとくぼみが残る)などの所見も出現してきます。
肝硬変ではアルブミンと呼ばれるタンパク質が低下してきますが、アルブミンは水分を血管内にとどめておく働きがあり、これが低下することによって水分が血管外にしみ出し、浮腫や腹水の原因となります。
また、
肝硬変が進行すると門脈という血管の圧が上昇し(門脈圧亢進症)、腹水の原因となったり、食道に静脈のこぶが出来て(食道静脈瘤)、それが破裂すると大量に吐血する患者さんもおられます。
C型肝炎になったら次のような薬剤が使用されます。
インターフェロン(IFN)
現在C型慢性肝炎にもっとも有効といわれている治療法で、1992年より保険適応となりました。インターフェロンはウイルスの排除を助け、増殖を抑制する作用があります。インターフェロンはウイルスに感染したときに体内でもつくられる物質(タンパク質の一種)で、C型肝炎の感染でもつくられるのですが、量が不十分であることがわかっています。そこで、C型慢性肝炎の患者に外部からインターフェロンを薬として投与しようというものです。
C型肝炎にかかってからの期間が短く、ウイルスの量が少ない人ほど効果があります。先ほどウイルスの型についてのコーナーで、「インターフェロン療法は、II型よりIII型が効きやすい」とお話ししましたが、重要なのはウイルスの量で、II型であってもIII型であってもウイルスの数が1ml中に100万個以下であれば効果が期待できます。「インターフェロンが著効するのは投与した患者さんの4割くらいだ」とお医者さんに言われたことはありませんか?確かに今までそういったデータが多くの施設から出され、定説みたいになっていますが、医者が適切な検査のもとに適応をきちんと検討すればもっと効果は上がるものと考えられます。
インターフェロンには、α、β、γの3種類があり、現在使用されているのはインターフェロンαとインターフェロンβです。αは筋肉注射・皮下注射、βは静脈注射で投与されます。インターフェロンは2~4週間くらいの入院が必要で、最初2~4週間毎日投与され、その後20~22週間は週3回の投与を行うのが一般的です。
なお、インターフェロンにはさまざまな副作用があり、事前にお医者さんから詳しい説明をしてもらうべきです。
※インターフェロンの考えられる副作用
1)発熱・インフルエンザ様症状
(発熱、悪寒、頭痛、倦怠感、筋肉・関節痛など)
→投与開始時に特によく見られます
(10日前後で改善することが多い)。
坐薬などで対応します。
2)精神神経症状
(抑うつ、けいれん、意識障害、知覚障害、めまい、眠気、不安、不眠、痴呆症状)
3)ショック症状
(血圧低下、尿量低下、その他)
4)過敏症状
(発疹、かゆみ、その他)
5)血液検査異常
(白血球・血小板数減少、貧血、出血傾向、その他)
6)肝臓障害
(GOT, GPT, LDHの上昇、ときにALP, γGTP, ビリルビンの上昇、その他)
7)腎臓障害
(蛋白尿、BUN, Cr の上昇、腎障害)
8)消化器症状
(食欲不振、悪心、嘔吐、ときに下痢、便秘、腹痛、口内炎、口渇、 味覚異常、その他)
9)皮膚症状
(脱毛、発疹、その他)
脱毛は後期の症状です。
10)循環器症状
(ときに心不全、心電図異常、その他)
11)内分泌症状
(甲状腺機能異常(亢進症・低下症)、糖尿病、その他)
12)間質性肺炎
(特に小柴胡湯の併用に注意)
13)感染症
(肺炎・膀胱炎など)
14)その他
(視力障害、眼底出血、ときに呼吸困難、体重減少、血清総蛋白減少、注射部位の疼痛など)
15)65才以上の高齢者は副作用の発現が高いと言われています。
上記の副作用を見て、その多さに驚かれた方もいるかもしれません。しかしこれは患者さんが事前に知っておくべき情報として、出現する可能性がある副作用を頻度のごく少ないものまで羅列しただけですので心配されないで下さい。医師の適切な指導と副作用の監視のもとにインターフェロンは投与されますので、どうぞ患者さんは治療に専念して下さい。
強力ネオミノファーゲンC(SNMC)
強力ネオミノファーゲンCは、グリチルリチンを重要な成分とする配合剤です。グリチルリチンには抗炎症作用や免疫調節作用があり、特に抗炎症作用は細胞膜の安定化や再生を促進し、肝機能検査でGOTやGPTを効果的に改善させていきます。ただし、これはインターフェロンのようにウイルス自体に対する直接的な作用はありません。また、投与は毎日あるいは週数回、連続して長期間投与する必要があります。インターフェロンの副作用が出やすい高齢者や、何らかの理由でインターフェロンが使用できない方に、肝炎を抑えていくという面で強力ネオミノファーゲンCがいい適応だと思います。
なお、強力ネオミノファーゲンCは副作用が少ない薬剤ですが、グリチルリチンのアルデステロン様作用により低カリウム血症や高血圧をきたすことがあります。また、かゆみを伴う皮疹が出現することもあります。
C型肝炎の患者さんの食事については、以前は高カロリー・高蛋白といわれてきました。しかし、日本は飽食の時代ですから、カロリーについては日頃十分な量が自然と体の中に入ってきます。ですから、今最も大切なのは、病状に応じてバランスよく且つ規則正しく食べることだと思います。
肝硬変では比較的症状が軽度の代償性
肝硬変と、自覚症状や肝機能(特にタンパクやビリルビンなど)の増悪がみられる非代償性
肝硬変とに分けられます。ここでは、「慢性肝炎及び代償期の肝硬変の患者さん」と「非代償期の肝硬変の患者さん」との二つに分けて考えます。
慢性肝炎~代償期の肝硬変の患者さんの食事
食事は一日3食以上きちんと食べましょう。一日1~2回にまとめて食べたり、偏食をするのはお奨めできません。十分なタンパクやビタミンを摂取し、適度なカロリーを心がけましょう。カロリーは一日2000~2200カロリーくらいが目安です。
脂肪肝を併発されている患者さんは、特にカロリーの取りすぎに注意しましょう(といってもダイエットはしないで下さい)。各栄養素をバランスよく摂取するために一日30品目くらいが目安です。特にタンパクは動物性脂肪と植物性脂肪をバランスよくとります。
タンパク質は、痛んだ肝細胞の再生と、その働きを助けます。一日で70~80gは必要だと思います。大豆類(豆腐や納豆)は人間が合成できない「必須アミノ酸」が多く含まれていていますので、植物性タンパクの摂取源としておすすめです。ただし、大豆類は鉄分を多く含みます。GOTやGPTが高値で推移している慢性肝炎の方は、肝内の過剰鉄が肝細胞の障害に関与している可能性が最近指摘されるようになりましたので、肝硬変時のようなタンパク合成能の低下がない
慢性肝炎の方は、大豆類などの鉄分が多く含まれる食品のとりすぎに注意してください。特に血液中の鉄(血清鉄)やフェリチン(肝臓の貯蔵鉄)などが高値の
慢性肝炎の方は、鉄分の摂取については医師と十分に相談して下さい。
また、肝臓はビタミンを蓄えておく働きがありますから、肝臓が痛んでいるときは、ビタミンの補給が大切です。
糖質は、これが不足するとタンパク質がエネルギーとして使われてしまい、肝臓に負担がかかる可能性がありますから、きちんととりましょう。更に、食物繊維は肝臓病の大敵である便秘の予防に役に立ちますから、積極的にとります。
非代償期の肝硬変の患者さんの食事
非代償性の肝硬変の患者さんの場合は、入院するケースも多いと思います。そこで、まず病院できちんと栄養管理をしてもらい、自分の病状に臨機応変に食生活を対応していく術を体験で憶えていただくことをお奨めします。特にアンモニアが高い場合や肝性脳症の症状が見られる場合は、タンパクは制限されます(入院では一日40gくらいまで制限されます)。食事性タンパク質は腸内細菌の作用によりアンモニアを発生するからです。
肝臓はアミノ酸代謝における主要臓器のひとつで、非代償期の肝硬変ではこの代謝の異常があるため、血中のアミノ酸組成に著明な変化がおこります。分枝鎖アミノ酸(branched chain amino acids; BCAA)と芳香族アミノ酸(aromatic amino acids; AAA)の分子比(モル比)を「Fisher比」と呼び、健常者では3.0以上を示しますが、非代償性の肝硬変の患者さんではこのFisher比が低下しています。肝性脳症の場合は芳香族アミノ酸の割合が上昇していますので、タンパクを制限した分は、分枝鎖アミノ酸栄養剤(BCAA製剤)で補います。
BCAA製剤には「アミノレバンEN」があります。アミノレバンENは1包50gで、210kcalのエネルギー量で、タンパクは13.5gです。これを一日2~3包服用します。水または温湯200ccに溶かし、一日3回食事とともに服用します。一日合計600ccと結構な量を服用しなければならず、毎日続けるのはとても大変なことです。患者さんが閉口して途中で止めるケースがありますので、医者はその必要性を患者さんによくお話しして、ご納得していただく必要があります。アミノレバンENのFischer比は約38で、遊離アミノ酸とペプチドを含有しています。
肝性脳症で入院された場合は、最初はアミノレバンの点滴用製剤を点滴で投与し、改善後は経口製剤に切り替えていきます。はじめに一日40gに制限していた蛋白量は、アミノレバンの経口投与後に、一日60gくらいまで徐々に上げていきます。
このほか、BCAA製剤には「ヘパンED」があります。
最近では、BCAAの顆粒剤もあります。これは非代償性の
肝硬変に保険適応が認めらた「リーバクト」という商品名の製剤で、低アルブミン血症の改善を目的とした分枝鎖アミノ酸のみからなる製剤です。分枝鎖アミノ酸は主として骨格筋でよく酸化されエネルギー源として利用され、また、蛋白の異化を抑制し逆に合成を促進することによって血清アルブミン濃度を高めるなど肝予備能の改善の効果もあるのです。(
肝硬変では、骨格筋蛋白の異化が亢進し、アンモニアの解毒機構として重要な役割を果たす骨格筋量が低下し、脳内のアンモニア取り込み量が増大しています。)
BCCAの割合が多い(つまりFisher比が高い)食物は、コーンフレークや牛乳、タマゴ、鶏肉、牛肉、魚介類などで、特にコーンフレークや牛乳、タマゴはおすすめのタンパク源です。逆に「慢性肝炎~代償性肝硬変の患者さんの食事」でお奨めした豆腐などの大豆類はFisher比が低いので注意が必要です。
この他、アンモニア上昇の原因となる便秘の予防のため食物繊維(緑黄色野菜など)は積極的にとりましょう。
なお、
腹水の貯留がある場合は塩分の制限(一日5g~7g)や飲水の制限(一日800~1000cc以内)をおこなう場合があります。塩分は水分を保持する働きがあるため、これを制限することで、血漿浸透圧や循環血液量の増加を抑え、腹水が増えないようにするのです。腹水がない場合でも、塩分は一日に9g以内にとどめておくべきと思います。
(追補)無症候性キャリアの患者さんの食事
最後になりましたが、無症候性キャリアの患者さんの食事に関しては、普通の健康的な食生活をしていれば、特に制限は必要ないでしょう。
肝機能回復、起死回生!従来の肝臓病治療を覆した驚きの一冊 『肝臓を元気に!』。
http://www.kenkyusho.com/liver-disease/liver-120-jpn
2007-12-27